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ゼロ戦クラブ(ゼロせんクラブ) ※オフィシャルジム 代表 影山資朗* 所在地 岡山県岡山市北区大元1丁目7-7 大益ハイツ103 交通 JR 大元駅 公式サイト 岡山総合格闘技ジム ゼロ戦クラブ(修斗/ブラジリアン柔術/グラップリング/キックボクシング/グローブ空手)【岡山/倉敷/水島/総社】 周辺地図 より大きな地図で 岡山県の修斗クラブ を表示 関連する人物 大道翔貴 永添潤 ★岡山県のクラブ
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ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 題名:ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 作者:辻村深月 発行:講談社 2009.09.14 初版 価格:\1,600 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』。なんていう謎めいたタイトルだろうと。しかし、とにかくいい小説である。最初はどういう作家なのかわからないだけに戸惑うところもあったのだが、母を殺し逃げている女性を、かつての親友が探す、というハードボイルド構成でありながら、探すというよりも、インタビュー小説のように、現代の女性の総論のようなところに向って行きそうなディテールの多さに、やや戸惑いを感じる。 しかし、巻半ばくらいから、この物語の持つ奥行き、その手の届かない場所に蹲る深い闇のようなものに気づき始め、その辺りからは、逃亡者も、探索者も、揃って自分の中心に過去というのっぴきならない宿命を抱え込んでいることが明らかになってゆく。 第二章は、逃亡者側の側の視点で描かれており、その中でもとても印象的な新しい女性が登場する。様々な女性たちの出現により、ヒロイン二人を取り巻く、友人たちの環境、母との正常ならざる関係といったものが浮き彫りにされてゆく。ラストの数ページになると、シーンとしてとても感動的なクライマックスが複数箇所あるので、読者としてのこちらは動揺する。 作家として知らないばかりでなく、何が書かれようとしているのか想像しにくい展開であるだけに、その動揺は意外に激しかった。今さらながらこの本を出版社より寄贈して頂きながら、このミス投票に間に合わせなかった我が読書スケジュールが呪わしい。出版社もよほどの自信作だったのだろう。締め切り前に読んでいれば、間違いなくランクインさせていただろう。29歳の女性作家という既成概念だけではとても侮れない才能を、容赦なく感じさせられてしまった。 (2009/11/15)
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ゼロ・ゼロ・チャージ C 光/水/闇/火/自然文明 (0) 呪文 ■この呪文のコストを支払うかわりに、手札からすべての文明を持つカードを1枚捨ててもよい。 ■お互いのプレイヤーは、自身の山札の1枚目を裏向きのままマナゾーンに置く。(裏向きのカードは、文明のない、コスト0、マナの数字0のカードとして扱う。) 作者:minmin 踏み倒し前提の5色呪文。 相手のトップを文明もコストも発生できないマナに変えるという使い道もある。 フレーバーテキスト 7+0=7、7×0=0、分かる? この世は『ある』か『ない』かしかないの。---七千世界 アルカ 評価 名前 コメント
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名前 総合 近接 遠隔 耐久 特殊 技巧 ゼロダークネス 【S++】 SS SS S F C カイザーダークネス 【S++】 S S A SS C ハイパーゼットン(イマーゴ) 【S++】 SS SS~SSS S~SS SS C ウルトラマンベリアル(ギガバトルナイザー所持) 【S++】 S~SS S A S B アークベリアル※1 【S~S+】 S SS S E C カイザーベリアル 【S】 S S A~S B B ハイパーゼットン(ギガント) 【S】 S A A F C ジャンキラー 【S】 SS A B D B ダークロプスゼロ 【S?】 S S A S D 巨大ヤプール(ヒットソングヒストリー) 【S-】 S S A C C ビートスター 【A++~S】 S A B E C タイラント(ゼロファイト) 【S--】 A B A A B ゼットン(飛び出す激バトル!) 【S--】 S C S A B スライ 【A++】 A C A B B 100体怪獣軍団 【A++】 S D A D C ミラーナイト 【A+】 B A B S A グレンファイヤー 【A+】 A F A B B アイアロン 【A+】 A A A F C ジャンボット 【A+】 A A B D B ヴィラニアス 【A+】 A C A D C メカゴモラ 【A】 A B~A B F C ダークゴーネ 【A-】 B B B A D グロッケン 【A-】 B F B B C バードン(飛び出す激バトル!) 【B++】 A F C F C エースキラーBS 【B++】 B F C F B デスローグ 【B++】 C B C F C ウルトラマンベリアル(素手) 【B+】 B F B D C ジャタール 【B+】 D F C S D ダークロプス 【B+】 B C C D B ベリュドラ 【未定】 S A SS F C ※1ブルーレイ発売まで待とうという結論になって有耶無耶になったまま?
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人造昆虫カブトボーグ VxV より、天野河リュウセイを召喚 ゼロのボーガー-01 ゼロのボーガー-02 ゼロのボーガー-03
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エリオ・モンディアルは、ミッドチルダの大富豪モンディアル家の子息とし てこの世に生を受けた。 自分を絶え間なく愛してくれる両親と、何不自由ない暮らし。 ゆくゆくは自分も父のようにモンディアル家の当主になるのだろうが、幼か ったエリオにはまだ関係のないことだった。 彼はただ、幸せな、幸せだと感じる幼年時代を過ごしていた。 それが全て、虚構であったとも知らず。 破滅はあっさり訪れた。ある日突然現れた、複数人の男たち。 彼は紙片の一枚と、厳然たる事実を一つ突き付けるだけで、愛する両親とエ リオの仲を引き裂いた。 モンディアル家の子息エリオは、とうの昔に亡くなっている。 この話を聞かされた時、エリオは何を言われているのかわからなかった。 続けて知らされる、自分の本当の生い立ち。息子の死を受け入れられない富 豪が求めた、悪なる技術。 エリオ・モンディアルは、いや、自分のことをエリオ・モンディアルだと思 い込んでいた少年は、人工的に作り出された偽物に過ぎなかった。 皮肉なことに、男たちによって事実を突きつけられたことが、モンディアル 夫妻に対して現実を受け入れされる切欠になったらしい。 前述の通り、モンディアル家は大富豪だ。男たちのバックボーンがなんであ ろうと、息子を守れるだけの富と権力があったはずなのだ。 なのに両親は……彼が両親だと思っていた人たちは、エリオに対して何もし てはくれなかった。 何故ならエリオは、自分のことをエリオだと思っていた少年は彼らにとって―― 「所詮、寂しさを紛らわすための、人形だったから」 東の空が、赤く染まっている。 「今日は、雨が降るかもな」 隊舎の屋上で朝焼けを見つめながら、エリオは呟いた。 まだ日の出だというのに、エリオはバリアジャケットを装備し、デバイスを 持った姿でそこに立っていた。 彼の呟きに答えるものは、誰もいない。後何時間かすれば、ティアナ・ラン スターが朝の訓練のために起きだしてくるだろうが、この時間に活動している のは恐らく彼だけだろう。 「ストラーダ、君は僕を馬鹿だと思う?」 饒舌で感受性豊かなことが特徴である、エリオのデバイス。真面目で実直な 性格と称される彼が、エリオに対して口を閉ざしている。 「良いんだ、君と僕は感情を同調させることが多いけど、こんな思いをするの は僕だけで十分なんだ」 特に、こんな醜さが混ざりあった負の感情は。 「じゃあ、行こうか? ストラーダ」 第11話「あなたを超えたくて」 ゼロとなのはが、地下を彷徨う少女を助けた翌日、二人は車に乗って幼女が 入院している病院に向かっていた。 当初、なのはは幼女を六課に運ぼうとしたのだが、様々な事情がそれを阻んだ。 「一緒に回収されたレリックと、そして生体ポッド……多分あの子は、人造生 命体の類だと思う」 遺伝子操作を利用したクローン技術などで誕生した人間のことを、ミッドチ ルダでは人造生命体と呼んでいる。 倫理的、技術的な問題から違法とされている研究だが、技術だけは完成して いるので違法研究者は後を絶たない。 「この世界では、クローンは違法なのか」 「一応、建前はね。そっちの世界は合法なの?」 「規制はされていなかった」 ゼロの居た世界は、そもそも人間の絶対数と出生率に問題が生じていたため、 遺伝子操作による人工生命に対する抵抗がなかった。 人間が持つ倫理観や価値観にしても、この世界とは大きく違い、政府主導で 遺伝子操作によって優秀な科学者となる人間を作り出そうとするプロジェクト もあったほどだ。 「どんな生まれ方をしようと、そいつが人間であることに変わりはない」 「良いこというね。友達のお母さんが昔、似たようなこと言ってたよ」 もっとも、昨日助けた幼女が人造生命体であると決まったわけではない。 生体ポッドに入っていたのは何かの偶然と考えることも、出来なくはない。 「けど、現場の状況を見るにガジェットを破壊したのは間違いなくあの子」 幼女を聖王教会が運営する病院へと運んだのはなのはであるが、ベッドで眠 るその寝顔は、どこから見ても普通の女の子だった。 「しかし、そう不思議はないだろう。六課にも、子供の騎士や魔導師がいる」 「エリオとキャロだね……確かに私も9歳のころから魔導師やってるけど」 あの幼女からは、全くと言っていいほど魔力が感じられなかった。あったと しても精々、同年代の子供が持つ程度、微々たるものだ。 だから、本当にガジェットを倒したのはあの幼女なのか、という疑問をなの はは抱いている。 「それに、どうしてあの子はレリックなんか運んでたのか」 ゼロが断ち切ってやった幼女の足枷の先には、なのはたち機動六課が探して いたレリックを収納するレリックケースと呼ばれるものがあった。ケースナン バーは6番、何故、幼女がこんなものを? 「ま、詳しいことは本人に聞いてみないとわからないかな」 その為に、なのはとゼロはこうして自動運転の地上車に乗っている。この世 界において車は『モーターモービル』なる呼称で呼ばれており、交通手段とし ては一般的だが、なのはは所有していない。 逆にフェイトは人気メーカーのスポーツカーを所有しているのだが、なのは に言わせると趣味の悪い車らしい。 到着した聖王病院は、何やら慌ただしくなっていた。なのはが事情を訊くと、 何と昨日の幼女が病室から逃げ出したというのだ。 「まだ子供とは言え、人造生命体には間違いありません。今、他の患者の避難 と周辺の封鎖をしています」 ゼロは応対したシャッハという名の女が、まるで幼女を危険人物のように表 現していることに違和感を覚えた。 この世界では人工生命が認められていないということだが、精神的に嫌悪感 を抱いているのだろうか? 「とにかく、手分けして探そう」 なのはは正面の中庭、シャッハは病院内、ゼロは臨機応変に動くという役 分担をして、幼女の捜索が始まった。 それなりに広い病院をたった三人で探すというのはなんとも非効率的に思え たが、非戦闘要員には任せられないという理由もあった。 駆け足で周囲を探し回るゼロだが、そう簡単に見つかるわけもない。 外に出ることは不可能だといういから、施設内のどこかにはいるはずなのだ が、人探しというのはこれでいてなかなか難しい。 病院の裏手をあらかた調べ、幼女の存在が確認できなかったゼロは、中庭へ と足を伸ばした。 「――!?」 衝撃的な光景が、そこにはあった。先ほどのシャッハとかいう女が、幼女に 向けてデバイスを向けていたのだ。 中庭に立つ幼女は人形を抱きかかえており、表情は怯えで凍りついている。 咄嗟だった。ほとんど考えなしに、ゼロは走り出した。人形を抱えた金髪の 幼女というだけで、共通点などそれぐらいだ。 けれど、ゼロは幼女の姿を重ね合わせてしまった。大切な、仲間と。 「なっ、お前は――!」 凄まじい速さでシャッハと幼女の間に割り込み、ゼロはシャッハに背を向け たままその喉元にゼットセイバーの剣先を突きつけた。 「自分が何をしているか分かっているのか」 瞬間、シャッハがデバイスを振った。ゼットセイバーを弾きとばすと、ゼロ との間に距離を取る。 「そこをどきなさい!」 幼女を背で隠すように、ゼロはシャッハの前に立ちふさがる。デバイスを持 ち、先ほどと衣服の形状が変わっていることから、シャッハも魔導師や騎士の 類なのだろう。 「断る、そっちこそ武器を下せ」 隙のない構えから、シャッハという女が相応の手練れであることはわかる。 デバイスも、形からして攻防一体の格闘戦を主体とした武器だろう。 セイバーでは不利かも知れないが、戦えないことはない。 幼女は、自分を守ってくれる男の背中を見つめていた。 だが、シャッハが魔力を解放させたことで再び恐怖を感じ取る。 「ゃ…ぁ…」 恐怖で足が崩れ、幼女は地べたに尻餅をつく。シャッハは、対象が見せた意 外な反応に、困惑気味に表情を変えた。 それまであったゼロに対する殺気や怒気が、消えていく。 「二人とも何してるの!」 異常を察知したなのはが、こちらに向かって駆けてきた。 これにより、シャッハは完全に戦意を消失したようである。デバイスを構え た腕を、静かに降ろした。 それを確認すると、ゼロもセイバーを収納する。 「まったく、子供の目の前で……」 なのははあきれ顔で二人を見つつ、屈んで幼女と視線を合わせる。 取り落とした人形、昨日なのはが売店で買った物だが、汚れを払って手渡し てやる。 「ごめんね、血の気の多い人たちで。立てる?」 骨の髄まで戦士の女に言われたくはないが、ここは黙っておくべきだろう。 なのはは服の汚れも払ってやると、幼女に尋ねる。 「会うのは二度目だけど、憶えてるかな?」 幼女は少しだけ驚いた表情をするが、判らないと言った風に首を横に振る。 そっか、となのはは呟く。 「じゃあ、初めましてだね。お名前……言える?」 「――ヴィヴィオ」 なのはが直接名前を尋ねたのではなく、名前は言えるかと尋ねたのには理由 があった。 残酷な話になってしまうが、幼女に名前があるのか、その可能性を考慮して のことだった。 「ヴィヴィオ……いいね、可愛い名前だ。私は、高町なのはだよ」 考慮が現実とならず、なのはは内心安堵した。 「なのは……」 幼女ヴィヴォオはその名を呟くと、今度は立って二人の様子を見守っている ゼロの方を見た。 幼い瞳が、ゼロを見つめている。 「ゼロだ」 こんな時、もう少し愛想良くできればいいのかもしれないが、出来ないもの は仕方がない。 「ゼロ……」 シャッハの方は見向きもしないあたり、ヴィヴィオは敵と味方を判別してい るのかもしれない。 確かにまあ、危険物扱いした挙げ句、武器まで向けてきた相手を味方とは思 えないのだろう。 「それで、ヴィヴィオはどこかに行きたいの?」 尋ねるなのはに、ヴィヴィオは不安そうな声を出す。 「ママ……」 「え?」 「ママが、いないの」 一瞬、本当に一瞬だが、なのはの表情が曇った。ヴィヴィオが人造生命体で あることは、病院の検査によって証明されている。 通常、人造生命体は母体から生まれることはない。つまり、ヴィヴィオに母 親は…… 「それは大変だね。うん、一緒に探そう」 事実を告げること、認識させることが必ずしも本人のためではないはずだ。 なのはとて、それぐらいは弁えている。ヴィヴィオの手を取り、自身も立ち 上がる。 「さて、それじゃあとりあえず……」 その時、なのはの持つレイジンぐハートが六課からの通信を告げた。 なのははヴィヴィオにちょっと待ってね、と断ると、回線をつないだ。 「なにかあったの?」 なければ通信などしてこないから、何かあったことには違いない。 『なのはさん、すぐに帰還してください!』 上ずった声で、シャーリーが叫んでいる。有事が起こったことを悟り、なの はがヴィヴィオに聞かれぬよう、小声で話す。 「何があったの?」 『それが、あの、エリオくんが……』 「エリオ?」 意外な名を出されて、なのはが顔色を変える。 『エリオくんが、無断で出撃をしました!』 機動六課は騒然とした空気に包まれていた。少なくとも、ゼロが帰還した時 はそうであった。 「状況は?」 ゼロは中央指令室に入り、その場にいたティアナを捉まえて状況確認を行う。 「あ、あれ、なのは隊長は?」 「遅れてくる。状況を説明してくれ」 「それが私にも何が何だか……」 まだ、六課でも完全に事態を把握したわけではないらしい。 司令官席では、 はやてが冷静な表情で手渡される資料に目を通していた。 「ゼロ!」 彼の帰還に気付き、フェイトが駆け寄ってくる。冷静さを失い、動揺してい ることが見て取れた。 「エリオが……エリオが!」 話によれば、新人たちの日課である訓練を、今日はなのはがゼロと外出して いたため、フェイトとヴィータで行うこととなったらしい。 しかし、決められた時間になってもエリオが現れず、心配をしたキャロが部 屋を尋ねたところ不在が発覚。 外出申請もなされておらず、不審に思ったフェイトが隊舎内の監視カメラの データを調べたところ、夜明け頃に隊舎から『出撃』するエリオの映像を発見 したのだ。 「行き先は、どこに出撃したんだ?」 この時期に出撃ともなれば、候補は二つしかない。だが、例えどちらに行っ たとしてもそれは無謀な行為でしかなかった。 「大型発電所に……スカリエッティの部下が占拠している」 やはり、そこに向かったか。 自分が言うのもおかしな話だが、単騎で攻め入るには危険すぎる場所だ。 追いかけるにしても、モニターにあるエリオの反応を見る限り、発電所は目 前だ。 フェイトの高速を持ってしても、間に合わないだろう。 「オレが行く。転送装置は使えるか?」 シャーリーに尋ねるも、彼女は青ざめた顔で首を横に振った。 「ダメです、現場は転送などの魔法を封じる結界が張られていて」 「ならヘリの用意だ」 陸路で行くよりは、よっぽど早い。連れ戻すことは出来なくとも、最悪の事 態は避けられるかも知れない。 「残念やけど、ヘリは使えへんよ」 ため息を付きながら、はやてが指揮座から立ちあがり、ゼロの方に振り向い た。 「整備中、エリオの奴、ヘリが使えないことを知った上で出撃したんやな」 なんという愚かなことを。 はやては、エリオの行動に腹を立てていた。彼なりに考えあってのことなの かも知れないが、こんなことは馬鹿げている。 一人の無謀さが、組織全体を揺るがすとは何故思わなかったのか。 「今、フェイトちゃんなりを行かせれば敵を刺激する可能性がある。予備ライ ンがあるとはいえ、あそこはクラナガンにとってなくてはならない施設の一つ ……下手に手出しは出来ない」 それはつまり、エリオを見捨てると言うこと。言明こそしなかったが、はや ては今のところ救援や応援を送るつもりはないらしい。そもそも送ったところ で、間に合いはしないのだ。 「見捨てるのか?」 ゼロが言った非情な問いかけは、この事態の根本的問題を指し示している。 様子を見るにしても、エリオが戦いを行おうとしていることは眼前の事実と なのだ。 だが、はやては苛立たしげに床を蹴って起ち上がった。 「んなわけあるか! 助けられるなら助けたい! けどな……方法がないねん」 はやての特徴として、彼女は身内には優しいというものがある。彼女とて、 助けられるならエリオを助けてやりたい。 だが、転送も出来ずヘリも使えず、かといって隊長クラスを派遣するわけに も行かず……どうすれば良いというのだ。 「あ、あのっ!」 その時、はやてとゼロのやり取りを見ていたキャロが手を挙げた。 「わ、私が、私のフリードならあそこまで飛べます!」 視線が一斉にキャロに集中し、慣れない彼女は俯いてしまう。 「エリオくんを、助けに行かせてください!」 昨日喧嘩をしたばかりだというのに、キャロはそんなことを微塵も感じさせ ない強い口調と思いで言い放った。 フェイトは何か言おうとして、何も言えず、近くにいたという理由だけでゼ ロの方を見た。 「それしかない。オレが一緒に行く」 「ゼロ、それは!」 「時間がない。連れ戻すには間に合わないとしても、最善を尽くすのがオレた ちの役目だろう」 フェイトは自身も出撃したい意思に駆られ、はやてを見る。しかし、はやて は首を横に振った。 「ゼロ…に任せる。とりあえずは」 エリオが出撃した大型発電所は、大都市であるクラナガンの電力供給システ ムの拠点となるべき場所だ。 スカリエッティは着眼点だけは良いというか、相手の痛い部分を正確に突い てくる。 発電施設は緊急時のトラブルに備え、いくつかの予備システムを持っている 物だが、それだって必ずしも多いわけではない。 しかも、病院とか管理局施設などの公共機関が優先的なので、都市機能を麻 痺させるという意味では十分だろう。 そのスカリエッティであるが、彼はかつてオットーが敗れた際、部下のウー ノにこのように語ったことがある。 「最低でも後二人、ナンバーズはやられるよ。これは、確定事項だ」 自分の部下を信用していないとも取れる発言だが、逆に考えればその時点で 残っていた三人の内、一人だけはゼロに勝つ可能性があるかも知れないと、ス カリエッティは思っていた。 そして、彼がそれなりに実力を評価していたナンバーズは、この発電所を占 拠している主、 「オットーに続き、ウェンディも敗れたか……そろそろ、姉が戦うときかな」 ナンバー5番、チンクである。彼女は番号が若く、姉より妹が多い古株だが、 それに見合うだけの実力を兼ね備えている。 その力はSランククラスの騎士を打ち破ったほどであり、姉妹間でも度々話 題となるチンクが持つ伝説である。 そんなチンクの実力ならば、確かにゼロに対して勝てるかもしれない。 かもしれない、と思っているのはあくまでスカリエッティだけであり、当の チンクは負ける気などさらさらなかったが。 「オットーは相手の情報が不足し、ウェンディは自分の技能に頼り過ぎていた。 戦いは、性能だけで決まりはしない」 妹たちの敗因を、チンクは冷静に分析している。ナンバーズの姉妹たちには、 一つの共通・共有能力があり、それらは『動作データ継承』『データ蓄積』と 呼ばれている。 前者は姉妹間での動作データを共有することで優れたコンビネーションを実 現させる戦闘最適化システムの一環だが、後者は姉妹の戦闘データを共有、認 識して学習するというものだ。 高度な戦闘学習システムであり、ナンバーズの姉妹らは、姉妹間で情報を共 有することで驚くべき速度で成長、強くなっていくのだ。 「故にナンバーズは、二度同じ相手には負けない。だが、この場合は二度目が あるかどうかだな」 それは自分が再戦もできぬほどに負ける、という意味ではない。 「ノーヴェ辺りが文句を言いそうだが、このゲームは姉が終わらせる。これ以 上、妹たちを傷つけさせはしない」 しかし……と、チンクは考える。ドクターの始めたゲームとやらも、順調に 進んでいる。 既に二人のナンバーズが敗れ、敵の手の中。目立った動きはまだないが、戦 闘機人システムを解析でもされたらどうするのか。 「そもそもドクターはこのゲームに勝つつもりがあるのか?」 チンクの発想は、実はスカリエッティの考えを明察していた。 最終的にはともかく、この時点で彼はゼロに勝つつもりなどなかったし、勝 てるとも思っていなかったのだ。 チンクを例外としたのは、彼がある程度はチンクの実力を評価しているから であるが、それでも絶対ではない。 「まあ、いいさ。姉は勝つ。姉が、負けるわけなどないのだから」 星空すら、みたことがなかった。 親元、エリオが親であると信じた、信じたかった存在と引き離された後、彼 はとある研究機関の実験動物となった。 その研究機関とそこにいる研究者たちは違法な技術で誕生したエリオを人間 と見なしておらず、非人道的を通り越し た扱いをしていた。 動物とみてもらえただけまだマシだったともいえるが、エリオの心が荒むの に時間はかからなかった。 研究所暮らしが数年を過ぎたとき、転機が訪れた。エリオを研究していた機 関と研究者たちが管理局によって逮捕されたのだ。 後に知ったのだが、エリオの身体を弄り回していた連中自体も違法研究者の 類で、管理局に無断でエリオの研究を行っていたことが発覚、捜査の結果、逮 捕された。実験動物となり、人としての自我が崩壊する寸前、エリオは助かっ たのだ。 「もう、大丈夫だよ」 幼いエリオの体を抱きかかえ、管理局の女魔導師は微笑んだ。 エリオは笑わなかった。どうやって人は笑うのか、エリオはそれを忘れていた。 両親の下に帰れるかもしれないと、期待しなかったわけじゃない。もしかし たら、という希望もあった。 しかし、現実とやらは少年にとって常に非情だった。 モンディアル夫妻は、エリオの引き取りを拒否したのだ。 しかも富豪としてスキャンダルを避けたかったとか、そういう理由ではなく、 「私たちの息子は死にました。私たちはそれを認められないばかりに違法な技術 に頼り、息子の紛い物を作ってしまった。死んだ息子の命を冒涜するような行為 です」 今存在するエリオをハッキリと紛い物呼ばわりした男に、かつての父親として の姿はなかった。 エリオを助け出し、モンディアル夫妻と面会した管理局の女魔導師は憤りを隠 せず、夫妻に向かって叫んだ。 「じゃあ、あの子は……エリオ・モンディアルとして生み出され、あなた方の息 子として生きてきたあの子はどうなるんですか! 用がなくなれば、それで捨て るっていうんですか!?」 女魔導師の言葉は痛烈だったが、モンディアル夫妻はさしたる感銘も受けなか ったらしい。 「あれはもう私たちの息子じゃない。外見だけ息子に似ているだけの別物だ」 エリオの心が完全に壊れた瞬間だった。未来も、希望も、全てが閉ざされたか に見えた。 彼は絶望を通り越し、悲しみを捨てたとき、怒りという新たな感情を覚えた。 彼は怒りに任せて暴れまわるしかなかった。幸いといっていいのか、彼には子 供ながら強い魔力があった。 本物のエリオ・モンディアル少年が持ちえなかった魔力を、研究者たちがさら に強化したのだ。 エリオは暴れるだけ暴れ、死のうと思っていた。自分など、誰にも必要とされ ていない存在なのだ。 誰が作ってくれと頼んだ? 誰が生み出してくれと願った? 俺は、俺を誕生さ せた全てを憎む。 エリオがその乱暴振りに手が付けられなくなっていた頃、彼を助け出してくれ た女魔導士が、彼を収容していた保護施設を訪れた。 彼女には、エリオがこうなってしまうのではと予想が付いていたのだ。 その身体を持って暴走を止められたとき、エリオは何も出来なくなった。 彼が怒りの裏に隠してきた感情が露わになってしまったのだ。 即ち、寂しさというなの弱さ。 エリオは泣き崩れた。女魔導士にすがりついて、泣くことしか出来なかった。 誰に甘えることも、涙を見せることも許されなかった少年が、最後の最後に見 せた弱さ。 彼はずっと泣きたかった。涙を流し、誰かに想いをぶつけたかった。 フェイト・T・ハラオウンは、そんなエリオの気持ちを全身で受け止めた。 彼を抱きしめ、彼と同じように涙を流した。フェイトには、フェイトにだけは、 少年の気持ちが痛いほど理解出来たのだ。 やがてフェイトは、エリオを自らの被保護者とした。 彼女はエリオに自分の生い立ちを話し、ただの同情で彼を引き取ったわけでは ないことを説明した。 エリオはぎこちなくではあるが、フェイトに受け入れられたことで精神均衡上 の安定を取り戻していった。 少年らしい少年へと、数年かけて戻すつもりであったが彼の経験と彼が敬愛す る女性の存在は、彼を大人びた性格へと変化させていった。 そのことを悪いことだと思ったことはないし、思われたこともない。 稀にフェイトが、もう少し子供らしくてもいいのにと苦笑するぐらいだった。 「あの時、あなたは僕に未来を作ってくれた。希望を、与えてくれた」 斬撃が、ガジェットを斬り裂く。 「僕に人を信じるということを、人を愛するという意味を、あなたは身体を張っ て教えてくれた」 だからエリオは、強くならなければいけない。誰よりも、フェイトよりも強く なって、彼女を、愛する人を守らなければ行けない。 「それが、あなたによって救われた、助けられた、守られてきた僕の願い!」 何もかもなくしたエリオにとって、フェイトとは唯一絶対の存在だった。 彼女が彼の前から消えること、彼女を失うことは、今のエリオの全てを失くす も等しいこと。 だからエリオは、守らなくてはいけない。自分の一番大切な存在を、守れるだ けの強さを得なくてはならない。 「ルフトメッサー!」 空気の刃が揺らめき、迫りくるガジェットを破壊する。 今倒したのは、何体目なのか、十体目までは数えていた気もするが、そんな余 裕もなくなった。 次々とわき出す敵をひたすらに倒し続け、前に進むしかない。 「くそっ、限がない!」 けれども、エリオとしてはそんなに長くガジェットと戦闘しているわけにもい かない。 彼の標的はあくまでこの施設にいるであろう戦闘機人で、ガジェットの全滅な どではないのだ。 「サンダーレイジ!」 範囲攻撃でガジェットを遠のけつつ、エリオは標的を探した。やがて、広く長 い廊下の先に、人影を見つけた。 体格は、子供の自分とさほど変わらないようにも見える。 長い銀発と、少女には似合わぬ黒色の眼帯が右目を隠しているが、代わりに左 目が鋭い眼光を放っている。 「やれやれ、侵入者だからと聞いて出て来てみれば、まさか貴様のようなガキだ ったとはな」 同じような背格好の少女にそんなことを言われたくはない。だが、相手は戦闘 機人だ。外見的年齢など無いに等しいはずだ。 「ここは子供の遊び場じゃない。さっさと帰れ」 「なんだと!」 あまりの言われようにエリオは声を上げるが、それが挑発であることは分かっ ている。 挑発で相手の平静さを乱し、猪突されようとしているに違いない。 ならば、こちらは敢えてその挑発に乗ってやる! 「ソニックムーブ!!」 高速移動魔法を発動させ、目にも止まらぬ速さでチンクとの距離を詰めたエリ オは、デバイスによる斬撃を繰り出した。 あたかも瞬間移動したかのような刹 那の速さ。挑発に乗ったと見せかけ、相手の予想を上回る速さで攻撃をする。 これならば…… 「遅いな」 エリオが繰り出した斬撃を、チンクはあっさりと避けた。 「なっ!?」 空振りに終わり、何の手ごたえも得られなかった攻撃にエリオが愕然とする。 フェイトほどではないにしろ、エリオは速さに自信があった。なのに、この相 手はそれをあっさりと、難なく避けてしまった。 「くそっ!」 再びソニックムーブ!!を起動し、地面を蹴ってチンクとの距離を取るエリオ。 移動し、近くの壁を蹴って反転すると、斬撃ではなく突撃でチンクへ攻撃をする。 「フッ……」 チンクは鼻で笑うと、そっと横に僅か動いただけで、エリオの突撃を完全に避 けた。 「だから言っただろう? ここは子供の遊び場じゃないと」 地面に着地したエリオは、さすがに驚愕の表情を隠せなかった。彼は速さに自 信を持っていた。 師であるフェイトには及ばないにしても、並の魔導師よりは速いという自覚も あった。 なのに、それなのに…… 「当たりさえ、すれば!」 エリオが立つ地面に、魔法陣が浮かび上がる。電撃がほとばしり、ストラーダ の刀身へと集まっていく。 チンクは微動だにせず、黙ってそれを見ている。 口元に、薄い笑みを浮かべながら。 「スピアーシュナイデン!!!」 高威力の斬撃が、チンクへと斬りこまれた。彼女は避けようとせず、左手をス トラーダに向けて突き出した。 「聞き分けのない子供だ」 左手から発生した防御壁が、スピアーシュナイデンを完全に受け止めた。 必殺の斬撃までも受け止められ、エリオは窮地に陥ったかに見える。 歯を食いしばるエリオだが、ストラーダは徐々に力を失っていく。 だが、エリオの攻撃はこれで終わりではなかった。 「避けずに受け止めたその油断が、お前の命取りだ!」 エリオは右手をストラーダから離すと、握り拳を固めた。 チンクの表情が、わずかに変化した。エリオの拳に、高密度の魔力が集まって いるのだ。 まだ完成はしていないが、この距離ならば外さない! 「紫電一閃!」 元々はライトニング分隊副隊長シグナムの技であるが、応用が利くということ でエリオも覚えたのだ。 魔力に打撃というシンプルな技だが、それだけに直撃すれば相当の効果が見込 まれるはずだ。 あえてデバイスから手を離し、エリオは相手の懐に潜り込んだ。相手に避ける 時間は、絶対にない。 「ダァッ!」 激しい魔力がチンクへと撃ち込まれた。外衣の上からであるが、確かに手ごた えはあった。これなら…… 打撃の衝撃で僅かに数歩下がったチンクだが、おかしい、直撃だったのだから もっと派手に吹っ飛んでもいいはずだ。 「…………はぁ」 それはおよそ戦闘に似つかわしくない、可愛らしいため息だった。失望と憐みを 混ぜ込んだ、少女の声。 チンクは溜息を吐くと、外衣についた埃を軽く払う仕草を見せた。その光景を、 エリオは唖然として見ている。 「油断と余裕の違いも解らないか。お前の攻撃は、この外衣を破ることすらできな いというのに」 嘘だ、とエリオが小さく呟いた。だが、彼が否定しようとチンクが纏っている外 衣には傷一つ付いていない。 圧倒的な実力差があった。ナンバーズとは、戦闘機人とはここまで強いものなのか。 「子供を殺す趣味はない。さっさと消えろ」 実のところ、チンクはエリオに嘘を言った。彼女が纏う外衣はシェルコートと言 われる防御機能を持つコートで、施設規模の爆発にも耐えうる強度を誇る。 これがあったから、チンクはエリオの紫電一閃に無傷でいられたのだ。 それを明かさず、いかにも自分と彼の間には歴然たる実力の差があるように見せ かけたのは、今言ったようにチンクが子供を殺すつもりはなかったからである。 もちろん、実力差があること自体は嘘ではないので、このまま戦いを続ければチ ンクはエリオを殺すことになるだろう。 それが嫌なのだ。 「まだだ、まだ僕は負けてない」 負けるわけには、行かないのだ。 エリオの瞳に、脳裏に、赤き姿が映し出される。圧倒的な強さと、強烈な存在感。 彼の愛する者が認める、最強の戦士。 悔しい、悔しいじゃないか。あの人は僕を強くなっていると言った。でも、それ じゃあダメだ。僕は強くなくてはいけない。強くなければ、あの人を守ることなん て出来やしない。 「僕は、強くなるんだ! フェイトさんより、そして彼女が強いと認めたゼロよりも!」 だから、絶対に負けられない。負けるものか。 エリオの魔力が、先ほどとは比べものにならないぐらい高まっていく。放出され る魔力の波に、空気が震える。 「そうか、小さいなりでもお前は騎士と言うことか……良いだろう、全力でかかっ てこい!」 チンクがはじめて、攻撃の構えを取った。もはや相手は弱者たる少年などではない。 目の前にいるのは敵、敵である騎士だ。 その頃、キャロとともに出撃したゼロはエリオが乗り込んでいった発電所へと到 着していた。 フリードリヒから降り、キャロとともに施設内へと突入する。 「これは……」 まず目に付いたのが、おびただしい数のガジェットの残骸だった。様々な型のガ ジェットが、ほぼ全壊している。 中には半壊も混ざっていたが、自律行動は不可能と言うほどには壊されている。 「凄い、全部エリオくんがやったんですか?」 他にいないだろうと、ゼロは言わなかった。猪突するだけあって、エリオとかい う少年はそれなりの腕は持っているのだろう。 だが……しかし。 「もしかしたら、エリオくんならナンバーズにも」 勝てるんじゃないだろうか。キャロは少女らしい安易な期待を寄せて、ゼロに同 意を求めるが、彼は慎重だった。 「先を急ぐ、オレたちはその為に来たんだ」 言って、ゼロは駆けだした。キャロも慌てて、フリードに跨り直してその後を追った。 エリオは呼吸を整え、正面のチンクを見据えた。悔しいが、敵の実力はこちらを 遥上回っている。 攻撃を満足に当てることすら、今の自分には出来ないかも知れない。 「速く……もっと速く」 これは賭けだ。持てる魔力の全てを出し尽くして、この一撃にエリオは全てを賭ける。 誰よりも速く、何よりも速く、最速で敵を貫く! 雷撃の魔力がエリオの身体を纏い、ストラーダの全体を光りに包んだ。 「メッサー・アングリフ!!!」 エリオの持てる、最大最強の必殺技が繰り出された。 この技は、まず突撃技であるスピーアアングリフで突撃し、相手の体勢を崩す。 続いてストラーダの先端に現れる魔力刃で敵を斬り裂く、二段攻撃。 激突斬撃技、エリオはそう呼んでいる。 「これが僕の、速さと強さだ!」 目にも止まらぬ、いや、目にも映らぬ速さがそこにはあった。 流石のチンクも、予想以上の速さに攻撃の構えを防御に変更しようとした。だが、 とても間に合わない。 攻撃が――当たる。 「ァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!?」 メッサー・アングリフがチンクへと直撃する、まさにその時エリオは悲鳴という 名の絶叫を上げた。 ゼットセイバーが、エリオとナンバーズが戦闘を行っている大廊下の扉を斬り破った。 ゼロとキャロがそこに入ったとき、廊下内には絶叫が響き渡っていた。 「なに!?」 キャロが驚きで目を見開く。対するゼロは、その悲鳴の正体を瞬時に悟った。 中空でエリオが魔力を放出させながら、絶叫していたのだ。 「エリオ、くん?」 信じられないものを見るかのように、キャロが呟いた。絶叫は、悲鳴は長く続か なかった。 魔力の光が消え、エリオは地面へと落下した。 「エリオくん!」 フリードから降りて、駆け寄るキャロ。ゼロも、その後に続く。 地面に叩き付けられ、エリオが倒れた。全身から煙を上げている。助け起こそう として、キャロは息を呑んだ。 全身が痙攣し、目の焦点が合っていない。 地面に落ちたとき割れたのか、額からも血を流している。四肢も一部は折れ曲が り、誰が見ても重傷だった。 「…………ッ!」 ゼロはバスターライフルを引き抜き、彼らの方を見ていた戦闘機人に銃口を向けた。 戦闘機人の少女は動じた風もなく、冷たい声を出した。 「言っておくが、こちらは何もしていない。そいつが勝手に攻撃して、勝手に自爆 したんだ」 「なんだと?」 「身の丈に合わない攻撃を使用としたんだろうな」 ゼロは戦闘機人の少女が何を言っているのか、理解した。そうか、そういうことか。 「過負荷、か」 聞き慣れぬ単語に、キャロが動揺めいた表情で見る。 過負荷とは、主に機械や電気回路など著しい負荷が掛かった場合に発生する現象 で、一般的にはオーバーヒートなどと呼ばれている。 つまり、機械や機器がその性能を以上に稼働してしまった際に内部崩壊を起こし てしまうことを指すのだが、これは人間にも当て嵌めることが出来る。 「その騎士は確かに強かったが、所詮はまだ子供だったというわけだ」 戦闘機人の少女の言葉は、正しかった。 エリオは確かに、才能があった。それに比類する実力も見せており、数年も経て ば今のフェイトにも匹敵する実力者になっただろう。 しかし、今の彼は、まだ子供だった。 子供の出せる力には、子供が出して良い力には、限界がある。 エリオは自分の身体が出せる限界を超えた力を出してしまった。 そして、その力にエリオのからだが耐えられるわけもなかった。 「すぐにそいつを連れて隊舎に戻れ」 ゼロは短く言うと、キャロを諭した。 「で、でも、あなたは……」 問いには答えず、ゼロはゼットセイバーを引き抜いた。 それを見た戦闘機人の少女も、どこからともなく数本のナイフを取り出した。 「その騎士を助けるのか? 恐らく、そいつは命令を無視して勝手に猪突猛進をし たんだろう? 第一、助けられたとしてお前に感謝などしそうにないが」 恐らく、事実となるだろう。エリオが出撃した理由が、ゼロへの対抗心であるこ とは誰の目にも明らかだった。 そのゼロに助けられたとしたら、彼は自棄を起こして再び同じようなことをする かも知れない。 だが、だとしても。 「オレはこいつを助ける。死なせやしない」 良い答えだ、と戦闘機人の少女は笑った。外衣を翻し、両手に幾本ものナイフを 構えている。 「我が名は、ナンバーズ5番チンク……刃舞う爆撃手!」 つづく 前へ 目次へ 次へ
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第ゼロ感 第ゼロ感 アーティスト 10-FEET 発売日 2022年11月9日 レーベル ユニバーサル DLデイリー最高順位 1位(2022年12月5日) 週間最高順位 2位(2023年1月10日) 月間最高順位 2位(2022年12月) 初動総合売上 955 累計総合売上 296378 プラチナ 週間1位 紅白歌唱曲 収録内容 曲名 タイアップ 視聴 1 第ゼロ感 THE FIRST SLAM DUNK 主題歌 配信/総合ランキング 週 月日 デジタルシングル 総合シングル 順位 週/月間DL数 累計DL数 順位 週/月間枚数 累計枚数 1 11/15 19 2387 2387 955 955 3 11/21 3 1104 3491 442 1397 2 12/6 4 7693 11184 8 3078 4474 3 12/13 1 15520 26704 5 6208 10682 4 12/20 1 11632 38336 5 7899 18581 5 12/27 1 11805 50141 6 4722 23303 2022年12月 1 46650 50141 2 21906 23303 6 23/1/3 2 13476 63617 3 5391 28693 7 1/10 1 11858 75475 2 4744 33436 8 1/17 2 10310 85785 4 4124 37560 9 1/24 2 9827 95612 4 3931 41491 10 1/31 1 8487 104099 6 3395 44886 2023年1月 1 53958 104099 3 21584 44886 11 2/7 1 9407 113506 2 3763 48649 12 2/14 1 8655 122161 3 3462 52111 13 2/21 1 6611 128772 10 2645 54755 14 2/28 1 6391 135163 5 2557 57312 2023年2月 1 31064 135163 5 12426 57312 15 3/7 2 5628 140791 5 2252 59563 16 3/14 2 5623 146414 5 2250 61812 17 3/21 1 5339 151753 9 2136 63948 18 3/28 1 4694 156447 10 1878 65825 19 4/4 3 4837 161284 13 1935 67760 2023年3月 1 26121 161284 10 10449 67760 20 4/11 3 3687 164971 11 1475 69235 21 4/18 7 4195 169166 15 1678 70913 22 4/25 7 4913 174079 16 1966 72878 23 5/2 6 4471 178550 17 1789 74666 2023年4月 7 17266 178550 20 6907 74666 25 5/16 7 3915 188921 17 1566 78815 26 5/23 6 3971 192892 17 1589 80403 27 5/30 8 3417 196309 22 1367 81770 28 6/6 6 3393 199702 17 1358 83127 2023年5月 5 21152 199702 24 8461 83127 29 6/13 6 3524 203226 17 1410 84537 30 6/20 8 2532 205758 19 1013 85550 31 6/27 10 1893 207651 758 86307 32 7/4 12 1859 209510 23 744 87050 2023年6月 9 9808 209510 35 3924 87050 33 7/11 19 1766 211276 707 87757 34 7/18 14 1634 212910 654 88410 35 7/25 9 1930 214840 772 89182 36 8/1 16 1305 216145 522 89704 2023年7月 14 6635 216145 39 2654 89704 37 8/8 12 1572 217717 629 90333 38 8/15 13 1510 219227 604 90937 39 8/22 12 1419 220646 568 91505 40 8/29 14 1256 221902 503 92007 2023年8月 10 5757 221902 42 2303 92007 41 9/5 5 3175 225077 24 1270 93277 42 9/12 4 5003 230080 9 2641 95917 43 9/19 5 2966 233046 19 1187 97104 44 9/26 6 1967 235013 787 97891 45 10/3 9 1740 236753 31 696 244257 2023年9月 7 14851 236753 33 5941 244257 46 10/10 9 2689 239442 20 1076 245332 47 10/17 12 2860 242302 23 1377 246709 48 10/24 15 1609 243911 838 247547 49 10/31 20 1378 245289 552 248098 2023年10月 10 8536 245289 38 3842 248098 51 11/14 15 1605 248098 1070 249650 52 11/21 11 1968 250066 14 2617 252266 53 11/28 10 1918 251984 17 1931 254196 2023年11月 13 6695 251984 29 6098 254196 54 12/5 10 1691 253675 19 1463 255658 55 12/12 11 1794 255469 718 256376 56 12/19 15 1318 256787 995 257370 57 12/26 12 2756 14906 8 2823 259610 58 24/1/2 5 6636 266246 3 12885 272782 2023年12月 9 14262 266246 11 18586 272782 59 1/9 3 8332 274578 2 14772 287554 60 1/16 9 3816 278394 11 2806 290359 61 1/23 10 2971 281365 19 1938 292296 62 1/30 19 2079 283444 27 1418 293714 2024年1月 9 17198 283444 9 20933 293714 63 2/6 20 1473 284917 1010 294723 64 2/13 17 1220 286137 809 295532 65 2/20 20 1179 287316 663 296195 65 2/27 183 296378 SLAM DUNK ED 前作 次作 マイ フレンドZARD 第ゼロ感 コリンズ コリンズ アーティスト 10-FEET 発売日 2022年12月14日 レーベル ユニバーサル CDデイリー最高順位 1位(2022年12月15日) 週間最高順位 1位(2022年12月20日) 月間最高順位 1位(2022年12月) 初動総合売上 24968 累計総合売上 96835 週間1位 月間1位 収録内容 曲名 タイアップ 視聴 Disc1 1 SLAM 1 第ゼロ感 THE FIRST SLAM DUNK 主題歌 3 和 4 ハローフィクサー 5 まだ戻れないよ 6 aRIVAL 7 ブラインドマン 8 123456789101112 9 アオ 10 炎 11 彗星 12 アリア 13 おしえて 14 シエラのように 15 深海魚 Disc2 1 暁の砂時計 THE FIRST SLAM DUNK BGM 2 Alert of oz 3 Slash Snake 4 BLIZZARD GUNNER 5 Double crutch ZERO ランキング 週 月日 順位 変動 週/月間枚数 累計枚数 1 12/20 1 新 24968 35650 2 12/27 6 3572 39222 2022年12月 1 新 37825 39222 3 23/1/3 4 ↑ 7647 52157 4 1/10 3 ↑ 6277 58433 5 1/17 2 ↑ 6253 64686 6 1/24 4 ↓ 5259 69945 7 1/31 2 4238 74183 2023年1月 2 ↓ 29673 74183 8 2/7 5 ↓ 4586 78769 9 2/14 4 ↑ 4455 83664 10 2/21 8 ↓ 3449 87112 11 2/28 5 3330 90442 2023年2月 3 ↓ 16259 90442 12 3/7 6 ↓ 2893 93334 13 3/14 15 ↓ 695 94029 14 3/21 ↓ 434 94463 15 3/28 ↓ 402 94865 17 4/11 11 ↑ 367 95636 18 4/18 13 ↓ 384 96020 19 4/25 ↓ 409 96429 20 5/2 406 96835 2023年4月 ↓ 1566 96835 22 5/16 ↓ 254 97449 関連曲 月夜の残響
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【名前】 ゼロスペクターゴースト 【読み方】 ぜろすぺくたーごーすと 【登場作品】 劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間 【分類】 パーカーゴースト 【対応眼魂】 ゼロスペクターゴースト眼魂 【詳細】 深海大悟(ゴーダイ)の魂が変化した半袖タイプのパーカーゴースト。 カラーリングは紫。 スペクターゴーストに酷似している。 パーカーは試作型なので、角は三本ある。 劇場版では内包された魂はわからなかったが、後に変身している「深海大悟」のものだったと『小説 ゴースト』で明かされた。
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「ふう……」 ようやく屋敷の手前に差し掛かり、ここまでの疲れが出たのか、 女性は手に持った荷物をどさりと地面に下ろした。 汗だくになった額を袖で拭い、曇った眼鏡を拭き直す。 王都トリスタニアから最寄の駅まで馬を走らせ、そこからは荷物を抱えての徒歩。 女性の一人旅にしては優雅には程遠い、かなり過酷な旅だったと言えよう。 王都までの道程も人任せとはいえ荷馬車の乗り心地はあまり良いとは言えない。 ましてや舗装など碌にされていない辺境なのだから、その労苦は推してしかるべきだろう。 腰が痛む度に、伯爵へのお土産として受け取ったワインを投げ捨てようかと何度思った事か。 奇跡的に生き残ったワインを抱えて女性は屋敷ではなく、そこから少し道を外れた。 屋敷の傍らにある林の中、燦々と降り注ぐ日差しを緑のカーテンが遮って薄く影を落とす。 一応管理はされているものの、手入れをする人手も資金もなく放置された荒地。 かろうじて道と判るそれを雑草を踏み分けながら彼女は歩む。 辿り着いたのは、木々に囲まれた一際拓けた空間。 その中央には彼女の背の数倍はあろうかという石碑が建っていた。 そこに綴られているのは、これまで貴族の名門モット家が歩んできた足跡。 初代から始まり、上に書かれた文字ほど掠れて読み取れない。 無論、記録として残されている都合のいい事ばかりだけで 高級貴族として地位を確保する為に張り巡らせた謀略や奸計には触れられていない。 ジュール・ド・モット伯爵に関しても女癖の悪さや惚れ薬と窃盗の件も記されず、 ただ一言『タルブ戦において兵を率いて勇敢なる活躍をせり』とあるだけだった。 モット伯の秘書である彼女は石碑にワインを置くと恭しく頭を下げた。 「伯爵様。タルブへの巡業よりただいま戻りました」 それは戦場から戻ってきたモット伯の指示によるものだった。 施療院の簡素なベッドに横たわり、自身の待遇に不平を唱えるでもなく、 急にそんな事を言い出した主に彼女は目を丸くした。 自分の死期を察し犯した罪業の重さに後悔を感じたのだろうか。 今更、善行を積んだとしても彼の罪が消える事はない。 そんな打算で開くほど天国の門扉は軽くはない。 しかし、それでも間際の安らぎになるのならと彼女は了承した。 専用の馬車もなくタルブとの往復だけでも重労働だったが、 復興を遂げていく自然豊かな村とそこに住まう人々に触れて学んだ事、 そして絵本を心待ちにしている子供たちの笑顔は何よりの報酬だった。 そこだけは主に感謝しなければならないのだろう。 「いつまでそうしているおつもりですか」 眼前に立つ石碑に向かって彼女は問いかける。 しかし、返ってくるのは木々のざわめきと鳥の鳴き声だけ。 静寂の中で彼女は再度、力強く詰め寄る。 「もう十分お休みになられたでしょう。 いいかげんにしないと職務怠慢で処罰を受けますよ」 「何を言うか。私はもう一生分働いた、だから後は好きにやらせてもらう」 「そんなのは認められません。人は汗を流して働くからこそ、その日の糧を得られるのです。 何もしないで食事にありつこうとするのは始祖と神への大逆になります。 人には愛を。罪には罰を。労働には対価を。ついでに今月の給料もまだじゃないですか」 反論する主に、ちっちと人差し指を左右に振りながら澄まし顔で答える。 つらつらと並べ立てられる説教にモット伯は嫌気が差したように本へと視線を落とす。 徹底してサボタージュを決め込む主人の姿に秘書は深く嘆息した。 “目つきの悪い天使にあの世から叩き出された”との言葉どおり、 モット伯は致命的な傷を負いながら奇跡的な回復を遂げて施療院から出てきた。 しかし、とある事件により王宮に愛想を尽かしたのか、 体調不良を理由に、仕事もせずにこうして本を読んで日々を怠惰に過ごしていた。 「ここも見つかったとなると、どこにも逃げ場はないな」 石碑の影に隠れながらモット伯はぽつりと呟いた。 仕事もしないで屋敷にいるとジャベリンの如き冷たさと鋭さの混じった秘書の視線が飛んでくるので、 気の休まる場所を見つけて読書に耽っていたというのに、今では秘書とのかくれんぼだ。 まあ逃げ場もなくなったようなので、この辺で降伏すべきだろう。 ぱたりと本を閉じて、モット伯は両手を上げて秘書の前に歩み出る。 抵抗を諦めた捕虜の姿に、有能なる敵指揮官は腕を組んでうんうんと頷く。 「よろしい。貴殿の賢明なる対応に免じ、食事は一日3回差し入れよう。 豆のスープと固くて噛み切れないパン1個、虚無の曜日には代用肉を」 上機嫌で遊びに興じる秘書の目がモット伯の持つ本に留まった。 表紙に絵が描かれたその装丁から彼が読むには珍しく絵本だと分かった。 その視線に気付いたモット伯は手を下ろして本を開く。 「ああ、これか…。これは例の絵本だよ、ミスタ・コルベールに協力してもらった」 その言葉に秘書は静かに息を呑んだ。 少し前に、モット伯が作った一冊の絵本。 少女に命を救われた犬が彼女の為に奮闘するという、そんな何処にでもあるような御伽噺。 だが、“ある真実”を知る者にとっては決してありふれた話などではない。 挿絵の一枚、主人公である犬の絵に目を向ける。 口に剣を携えて巨大なゴーレムに挑む小さな犬の姿。 それは空想の世界の産物などではない。 実在し、そして存在を抹消された英雄の記録。 「こんな物を発行して大丈夫なんでしょうか?」 「なに、これはただの絵本だ。連中は絵本など読まんし、 気付いた頃に慌てて回収すれば真実だと知らせるようなものだ」 自慢の髭をいじりながら飄々とモット伯は答えた。 その楽しげな表情に秘書は“ああ、そういえば”と思い出した。 こと嫌がらせに関しては主人の右に出る者などいなかった、と。 ページを捲りながらモット伯は誰に言うでもなく呟いた。 「もしかしたら私と同じ様に考えた者が『イーヴァルディの勇者』を…」 「何かおっしゃいましたか?」 「いや、ただの独り言だ」 『イーヴァルディ』が存在したかどうかなど分からない。 頭の固い学者に言わせれば平民の夢物語と答えるだろう。 だが、その名と功績は伝説として今も語り継がれている。 彼は永遠となった。物語を通して人々に彼の勇気と優しさを伝え続ける。 それは、彼に助けられた誰かの切なる願いだったのかもしれない……。 ジュール・ド・モット ……タルブ戦での功績が認められるも、その後の職務怠慢により褒章を逃す。 辺境や山村を巡回して絵本を読み聞かせるなど平民の文学教育に貢献する。 死後、平民文学の開花への貢献から『平民文学の父』と称される。 戻る 目次 進む
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授業と授業の合間にある休憩時間。 魔法学院の廊下を愛らしい少女が楽しげに歩む。 両手に抱えられているのは図書室から借りてきた本。 そこに綴られた物語を思い返し少女は心を震わせる。 尻尾のように二つに結わえた髪が小刻みに揺れ、 冒険譚に弾む彼女の心を表現しているように見えた。 返しにいくのを惜しみながらも新たな出会いに胸膨らませる。 ―――今度はどんな物語が待っているのだろうか。 そんな空想の世界に身を浸していたのが悪かったのか、 それとも次の授業に遅れまいと慌てていたせいか、 突然目の前の部屋から飛び出した人影に彼女は反応できなかった。 「きゃ……!」 どすん、と鈍い音が響いて彼女は床に尻餅をついた。 予想だにしなかった衝撃に目を回しながらも、 抱えた本を落とさなかったのを確かめて安堵の溜息を漏らす。 ふと気付けば目の前に映る二本の足。 それで、ようやく自分が人にぶつかったのだと気付いた。 “ごめんなさい”と言おうとして彼女はその人物の顔を見上げた。 だけど、喉からは何も出てこなかった。 見たことがない服装に手に握りしめた剣。 なんでトリステイン魔法学院の女子寮に男の人、 それも平民がいるのか判らなくて私は困惑していた。 だけど声を失ったのは、そんな些細な事じゃなかった。 ただ、その人が怖かったのだ。 倒れている私にも気付かない程、その人は怒っていた。 悔しくて、悲しくて、だけど自分ではどうしようも出来なくて、 その感情を怒りに代えて吐き出さなければ壊れてしまうのではないか、 そう思えてしまうぐらい彼は思い詰めた表情を浮かべていた。 「どうする気だ、相棒」 「決まってるだろ! 姫様の所に行くんだよ! そんなふざけた命令、俺が絶対に撤回させてやる!」 部屋から飛び出した才人にデルフが訊ねる。 帰ってきた答えはデルフが予想していた通りのものだった。 相棒の鬼気迫る様子は赴くというよりは殴り込みそのものだ。 恐らくは阻む者全てを薙ぎ倒してでも相棒は行くだろう。 それが彼に真実を明かしたくはなかった理由の一つでもある。 才人には許せなかった。 ルイズの使い魔だった“彼”はルイズの為、 トリステインの為、そして皆の為に命を捨ててまで戦った。 なのに、その活躍も存在した証さえも消されたのだ。 これが“彼”への報酬だとしたらあまりにも報われない。 それでは何の為に彼は死ななければならなかったのか。 実験動物として辛い日々を生きてきた彼には誰よりも幸せになる権利があった。 なのに、それを失ってまで守ろうとしたものに裏切られたのだ。 ……まるで使い捨ての駒か何かのように。 全身を駆け巡るのは尊厳を踏み躙られた事への怒り。 才人にとって“彼”は今聞かされただけの存在だ。 だが、それを才人は我が身のように感じていた。 人間と犬の違いなど些細な物でしかない。 同じ主人の使い魔として。 同じ世界からの来訪者として。 そして、同じ少女を好きになった者として。 「止めろ相棒。アイツのやった事を全部無駄にしちまうつもりか」 「っ………!」 諭すかのようなデルフの言葉に才人は足を止める。 感情に突き動かされていた身体を理性が食い止める。 才人とて無知ではない。今がどんな状況かも理解している。 アルビオン侵攻を前にゲルマニアとの連合が崩れれば、 それこそトリステイン王国の存亡に関わる。 そんな事になれば彼の努力も全て水泡に帰すだろう。 他ならぬ才人自身の手によってだ。 噛み砕かんばかりに力を込められた奥歯が悲鳴を上げる。 その身に宿すガンダールヴの力があったとしても、 突きつけられた現実の前では彼は無力な少年に過ぎなかった。 (ありがとよ、相棒) 若さ故の短気かもしれないが、それでもデルフは彼の行動を好ましく思う。 彼は会った事もない、前の相棒の為に体を張ろうとしてくれた。 ただルーンだけで繋がった存在でしかない“彼”の為にだ。 自ら主を選ぶ事が出来ない剣の身として、彼等と巡り会えた幸運に感謝する。 願わくば、もう少しだけこの時間が続かん事を。 才人の視線が倒れた少女へと向けられる。 ルイズの一つ下の学年の子だろうか、彼女はひどく怯えた表情を見せる。 それに戸惑いながら、ふと窓ガラスに映る自分の顔に気付いた。 (ああ……無理もないな) そこにいたのは才人も知らない自分の姿。 怒りを隠そうともせず周囲に撒き散らす獣。 こんな顔を見せたら、きっと目の前の少女と同じく、 戻ってきたルイズにも驚かれるな。 そしたらデルフが語った事もバレてしまう。 小さく、しかし深く呼吸をして才人は自分を落ち着かせる。 「ごめんな」 少女が言おうとした言葉が才人の口から零れる。 彼女も何かを言い返そうとしたが、震える喉につかえて声にならない。 部屋の中に戻っていく悲しげな背中を、少女は黙って見送る事しかできなかった。 辛うじて搾り出した声は扉の閉まる音に掻き消された。 扉を背にしたまま平賀才人は立ち尽くす。 俯いて悔しげに一人拳を震わせる相棒の姿。 彼の姿がかつてのルイズと重なって映る。 ……いや、あの時はもっとひどかった。 仕方がなかったとはいえ、相棒を失った直後に今度は存在そのものを抹消されたのだ。 絶望に打ちひしがれた彼女の姿は見るに忍びなかった。 ギーシュやキュルケ達が心配しようとも部屋を出る事はなく、 首輪をぎゅっと握り締めて、ただ相棒との思い出が綴られた日記を繰り返し読んでいた。 泣く事も笑う事もなく、無機物のように成り果てた痛ましい姿。 もう二度と以前の彼女に戻る事はないのではないかとさえ思った。 ―――もしかしたら相棒の後を追ってしまうのではないかとも。 『なあ、嬢ちゃん。今は無理でもいい。 だけどいつか相棒がいた事を思い出して笑ってくれ。 ……アイツがやった事が無駄じゃなかった証としてさ』 デルフリンガーの声に応える者はなく、 誰にも届かぬ言葉が虚しく狭い室内に響き渡った。 ルイズが一人部屋に閉じこもった頃、 トリステイン王国は“奇跡の大勝利”に沸きかえり、 城下町であるブルドンネ街では戦勝記念パレードが行われていた。 聖獣ユニコーンに引かれたアンリエッタの馬車を先頭に、トリステイン王国の勇士達が後に続く。 一目彼女の姿を見ようと詰め掛けた観衆が狭い街路は元より、 通り沿いの建物の窓や屋上、果ては屋根の上にまで溢れる。 「アンリエッタ王女万歳! トリステイン王国万歳!」 口々に叫ばれる歓声と舞い散る花吹雪。 数で勝る軍事強国を相手にした大勝利に、民衆の歓喜の声は高まるばかりだった。 自ら戦場に立ち勝利を収めたアンリエッタ王女は『聖女』と崇められ、 その人気の後押しを受けて王の死後、空位であった女王への即位も決まった。 興奮する民衆の声援を受けながら馬車の中でアンリエッタは憂鬱な表情を浮かべる。 それに気付いたマザリーニが声をかける。 「姫殿下……いえ、もう女王陛下とお呼びですべきでしょうな。 そのような顔をなされては民も不安になりましょう。 王の責務は重大なれど一人で背負う必要はありませぬ。 微力なれど我等が全力で補佐いたします」 「……いえ、そうではないのです」 戴冠する事への不安はある。 一国の命運を預かるという責任は少女の肩に担うには重すぎる。 しかし、彼女は望んでその道を選んだ。 己の立場を自覚し背を向けるのを止めたのだ。 何度失敗してでもいい、前へ進もうと決めた。 まだ未熟かもしれないけれど女王の責務をやり遂げてみせる。 だが、力強く前途への一歩を踏み出そうとする彼女の心には一片の翳りがあった。 「ミス・ヴァリエールの使い魔のことですな」 マザリーニの言葉に黙ってアンリエッタは頷いた。 トリステイン王国でもごく一部の人間しか知らなかった“バオー”の情報。 それが突然ハルケギニア全土で公表されるという事態に彼等は何の対応も取れなかった。 決断を迫られる中、アンリエッタはバオーという存在の抹消を決めた。 それがどれほど自分の親友を傷つけるかは判っていた。 だけど国一つと引き換えには出来ない。 罪悪感に苛まれながら彼女は己の責務を全うした。 きっとルイズは私を許さないでしょう。 引け目のあった彼女たちを利用して戦場へと送り込み、 使い魔を死なせたばかりか、その功績さえも揉み消したのですから。 如何なる罰を受けようとも許される事ではない。 面と向かって罵倒された方がどれほど救われるか。 生きる気力さえも無くした彼女を見るのは、 どのような苦痛よりも耐えがたく辛いものだった。 「なればこそ笑顔で。民に元気な姿を見せるべきです」 「え?」 「過ぎた事は変えられません。 失われた命はたとえ始祖の御業とて戻らない。 だからこそ人はそれを尊いものと感じられるのです」 振り向いた先にいたマザリーニの姿にアンリエッタは戸惑う。 それは彼女を案じて苦言を呈する小うるさい老人ではなく、 前国王より託されたトリステイン王国を守る為に奔走する政治家でもない。 少女の告解を聞き遂げ、それに答える神父としてのマザリーニがいた。 「“彼”だけではありません。 タルブでの戦いで多くの者が命を落としました。 この勝利は彼等の犠牲の上に成り立っているのです」 武器を手に己の血を流し尽くして戦った英雄達。 しかし、この行列の何処にも彼等の姿は無い。 軍の共同墓地に埋葬されたか、 あるいはまだタルブの草原で朽ちた体を晒しているのかもしれない。 民衆の賞賛の声も永久の眠りについた彼等には届かない。 「散っていった者たちの為にも振り返ってはならないのです。 彼等が守ろうとしたものを生き延びた者が受け継ぎ、 過去は変えられずとも未来ならばと強く信じ、己の成すべき事を成す。 少なくとも私はそうしてきました、そしてこれからも……」 アンリエッタは彼の言葉に耳を傾けながら思う。 前国王が亡くなってから彼は何度、苦渋の決断を迫られたのか。 その決定により何人もの人間が不幸になったかもしれない。 多くの誹謗中傷が飛び交おうとも、それでもマザリーニは自分の責任を放棄しなかった。 その強さに、責任を負う立場となって初めてアンリエッタは気付いたのだ。 「生きる者の責務、ですか」 ポツリと呟き、アンリエッタは窓の外へと手を振る。 直後、ブルドンネ街は割れんばかりの喝采に包まれた。 「凄い熱気だな。これではまるで建国記念だ」 賑々しい凱旋の一行を中央広場の片隅で見ていたボーウッドが呟いた。 他のアルビオン軍の貴族達も同意するように頷く。 思わず口走った言葉だが、あながち的外れではない。 若き女王の即位は伝統に縛られたトリステイン王国に新しい風を吹き込むだろう。 それを証明するように、タルブ戦で活躍したアニエスという女性兵士が親衛隊長に抜擢され、 平民でありながら騎士として貴族の仲間入りしたらしい。 新興のゲルマニアならともかく格式に拘るトリステインでは考えられなかった事だ。 「まるで春の到来だな。いや、春風にしては些か強烈だったかな」 その隣で彼の友人である老士官が笑いながら大仰な仕草で声を上げた。 とても敗軍の将とは思えぬ態度に、傍に立っていた監視の兵が苦笑いを浮かべる。 まるで『これではどちらが捕虜か判らない』と言わんばかりに。 その様子にボーウッドをはじめ仲間の貴族達も頭を抱える。 しかし彼の相も変らぬ態度に幾分か救われたのも事実だ。 監視の目こそあるものの、杖を取り上げられただけで、 彼等は拘束もされず他の見物客同様に勇壮な行進を眺めていた。 捕虜宣誓を行った以上、その誓いを破る事は貴族にとって最大の汚名であり、 名誉に傷を付けるぐらいならば彼等は進んで自らの命を絶つ。 それを互いに理解しているからこそ捕虜宣誓は成り立ち、 貴族にはそれに相応しい礼を尽くした対応がされるという訳だ。 しかし、それは貴族だけで平民はそうはいかない。 念の為にボーウッドは近くにいた兵士に自分の部下の処遇について訊ねた。 兵士が言うには、反抗する者は少なく彼等には軍役か強制労働のいずれかが課せられるという。 暴動騒ぎも食事の心配もないと聞かされ、ようやくボーウッドは胸を撫で下ろした。 恐らく捕虜のほとんどは軍役に就く事を望むだろう。 幸い、と言うべきかどうかは判らないが。 アルビオン軍に当初の戦意は残されていなかった。 無理もない。艦隊を壊滅させたあの光を目の当たりにしたのだ。 そして何よりも大きかったのはクロムウェル議長の死だ。 神聖アルビオン共和国の総大将にして命を操る『虚無』の使い手であった彼の死によって、 アルビオンとトリステインの戦いの趨勢は決まったと言っても過言ではない。 後は最小の犠牲でこの戦争が終わってくれることを祈るだけだ。 ―――今度は勝者の側ではなく、敗者の側として。 「見なよボーウッド。トリステインの『聖女』様がお通りになるぞ」 ホレイショに言われて視線を起こした先には、ユニコーンに引かれた絢爛たる馬車。 その窓から次期女王が手を振った瞬間、観衆の興奮は最大限にまで上りつめた。 背後に続く女性騎士も彼等に応えるように手を振る。 こちらも女王にこそ負けるものの、人だかりから盛大な歓声が上がった。 平民から貴族へと登りつめた彼女は民衆にとって大きな希望だ。 眩く輝いて見える彼女達を感慨深そうに眺めた後、老士官は口を開いた。 「そうか、いや実に素敵だ。彼女は栄光を掴み取ったのだな」 「どうしたんだ? まるで自分の事のような喜びようじゃないか」 「嬉しいに決まっているだろう。彼女が出世してくれなければ、 私は『大軍を率いながら平民の女性に負けた役立たずの無能者』として、 延々と後世に語り継がれてしまうではないか。そんなのはごめんだね」 口と頭が直結しているとも思える戦友の言葉にボーウッドは肩を竦めた。 素直ではないな、で聞きとれないほど小さな声で呟く。 武装と数において圧倒するアルビオン軍相手に奮戦した彼女達の活躍。 それが認められた事を本心では喜んでいるのだろう。 ……この戦いでも多くの兵士達の命が失われた。 なればこそ讃えられるべき者に相応しい名誉をと切に願う。 ふと沸きかえる観衆へとボーウッドは視線を移した。 老若男女を問わずに盛り上がる中、彼はそこに一人の人物を見出した。 これは偶然か、それとも意図的な物かは判らない。 ただ、この機会を逃せば恐らく二度と再会する事はない……そんな気がした。 意を決しボーウッドは先程の衛兵を再び呼びつけた。 「すまない。少し外したいのだが構わないかね」 「残念ですが私の一存では何とも……」 「なに、今日は祭りだ。多少、羽目を外しても問題ないだろう」 そう言うとボーウッドは衛兵の手に金貨を握らせる。 それに衛兵の頬が緩むのを確かめ、 “君の同僚たちの分だ”とさらに数枚の金貨を積み重ねる。 衛兵も立場上そう言ってはいるがボーウッド達が逃げないと判っている。 礼は尽くしたつもりだが捕虜になってから不自由もあっただろうと衛兵は思い、 酒を飲むぐらいなら問題ないだろうと判断した。 「では我々一同、ご厚意に甘えさせて頂きましょう」 衛兵の笑みにボーウッドも笑みで返す。 そして何食わぬ顔で熱狂に沸く見物客に紛れ込んだ。 遠ざかっていく彼の背中を見送りながら衛兵は金貨を確かめた。 「……これは!? ボーウッド卿!」 直後、違和感に気付いた衛兵が声を上げた。 しかし既に彼の姿はなく、衛兵の声に振り返る者はいない。 再度、衛兵はまじまじと一枚の金貨を眺める。 通常の金貨とは少し違うが、純金で鋳造された立派な品だ。 恐らくは偽造したのではなく手違いで作られた物だろう。 ならば使っても大丈夫だろうと再び金貨を見やる。 「それにしても珍しいな。両方表の金貨なんて」 アンリエッタの馬車の後方、そこに付き従うようにアニエスはいた。 毛並みのいい白馬に跨り、騎士の正装を纏った彼女に女性達の黄色い声が浴びせられる。 彼女の凛々しい顔立ちは正しく一度は乙女が憧れる騎士そのもの。 厳つい顔つきに野暮ったい髭を伸ばした他の騎士は既に視界の外に追いやられている。 かつてはワルドをはじめとする衛士隊に向けられた視線は彼女に集中していた。 元々、城下町の警備を担当していたという地元意識も影響したのだろうが、 それでも話題の中心にあったのはアンリエッタ女王と彼女だった。 だが、当のアニエスは浮かない表情で馬を歩ませていた。 「…………はぁ」 思わず彼女の口から漏れる溜息。 直後、彼女の背中に大きな掌が叩きつけられた。 盛大な音と共に電流が走ったような痛みが背中全体に広がる。 じんじんと痺れる痛みを背中に感じながら落馬しそうになったのを必死に堪える。 「何をする!? 場を弁えよ!」 目に涙を浮かべながらアニエスは抗議の声を上げて振り返る。 しかし犯人を目にした瞬間、彼女の時間は停止した。 「いかんな。祭りの主役がそのような顔をしていて他の者が楽しめんぞ」 豪快に笑い飛ばしながら、そう言い放った人物の顔に彼女は覚えがあった。 そう。あれは王宮で行われた騎士の宣誓式の時だ。 立会いにマザリーニ枢機卿ら数名の高級貴族が居合わせ、 その中に彼の姿があったのをハッキリと憶えている。 トリステイン王国にあって最高の栄誉の1つとされる元帥の座にある名門貴族、 グラモン伯爵その人であった。 声も出せず、ぱくぱくと動くアニエスの口。 同じ伯爵でもモット伯とは比較にすらならない。 どれだけ違うかというとトカゲとサラマンダーぐらい。 無礼な態度を取れば、たちまちに騎士剥奪されてもおかしくない。 しどろもどろになる彼女の姿に、グラモン伯爵は毅然とした態度で伝える。 「親衛隊隊長と元帥ならば同格だろう。もっと胸を張りなさい」 「しかし、私には過ぎた名誉と……」 「確かに勇戦したとはいえ此度の戦いでの勝利だけでは不足かもしれん。 だが、任務に失敗したとはいえ内戦中のアルビオンに潜入し、 貴重な情報と一緒にヴァリエール家の三女を無事に連れ帰った。 これを評価に値する功績と認めた上で、信頼の置ける人物として女王陛下がお決めになった事だ。 我々は口を挟まんし、そのつもりもない。それとも何か不満があるのかね?」 自分に向けられたグラモン伯爵の眼にアニエスは押し黙った。 不満などある筈がない。一介の兵士から騎士、それも近衛隊の隊長にまで登りつめた。 一つずつ踏み出していこうとした階段を十段飛ばしで駆け上がったのだ。 討つべき仇はもはや手の届く場所にある。後は襟を掴んで引きずり倒し同胞の無念を晴らすのみ。 たとえ宮中で『成り上がり者』『身の程知らず』と呼ばれようと構わない。 そのような雑音や児戯にも似た嫌がらせなどどうでもいい。 私が生き残ったのは……そして今、私が生きているのは全て復讐の為。 ならば喜ぶべきだと分かっていながら私の心は晴れない。 それどころか向けられた歓声さえ叱責にすら聞こえてくる。 どうしてかなど、そんな理由なんて考えるまでもない。 この栄光は私が掴んだ物ではなく横から奪い去った物だから。 本当に讃えられるべき者は此処にはいない。 どこまで続くかのような凱旋の行軍。 その何処を探しても、あの小さな主従は存在しないのだ。 「『ここは自分が居るに似つかわしくない場所だ』……まるでそう言いたげだな」 心中を見透かされたアニエスが視線を落として俯く。 彼がアニエスの胸中を察する事が出来たのは経験者が故だった。 グラモン伯爵も元帥に昇りつめるまでに多くの戦友を失っていた。 ある者は撤退する部隊の殿を務め、また、ある者は生きて帰れぬ任務と知りながら笑って別れを告げた。 文字通り全てを国に捧げて戦った者達が忘れられていく中、 自分が元帥の地位にいていいのかと彼も葛藤していた時期があった。 「胸を張れ。大切な者を失ったなら尚の事だ。 彼等の意思を継ぐ者として、その生き様に恥じぬように誇れ。 想いを守り伝えていく事が出来るのは生き延びた者だけなのだからな」 厳しくも温かみを感じさせる声がアニエスの胸に響く。 傭兵として戦場を渡り歩いていた頃は仲間の死など気にも留めなかった。 元より彼女にとって仲間と呼べるのは炎の中に消えた村の皆だけ。 しかし、今は違う。彼女は気付いてしまった。 復讐だけを誓ったのに、今の自分にはかけがえのない者たちが出来てしまった事を。 そして、その内の一人を失ってしまった事に。 馬車の窓から覗く女王の手。 それに反応して観衆から地響きにも似た歓声が上がる。 彼女に倣い、アニエスも同様に沿道の民衆に手を振った。 アンリエッタにこそ及びはしないが、それでも盛大な祝福が彼女に向けられる。 それを真っ向から受け止めて彼女は決意した。 復讐は成し遂げる。だけどそこで終わりはしない。 生の続く限り、ルイズたちを見守っていこう。 今度こそ大切な者を失わないように私はもっと強くなる。 「いい眼だ。これからも公私ともにギーシュの事をよろしく頼む」 「はい! お任せください!」 顔を起こしたアニエスにかけられた伯爵の言葉。 それに快く応じた彼女にグラモン伯爵は笑みを浮かべて先を行く。 アニエスの瞳に映る大きくて広い背中。 彼はその背に多くの物を背負って前へと進むのだろう。 その姿が子供の頃に見た父親と重なって映る。 ふと彼の言葉を疑問に感じたアニエスが首を捻る。 「はて? 公私ともに、とはどういう意味だろう?」 彼女がこの言葉の意味を知るのは数週間後。 二人の仲を勘違いしたグラモン伯爵が用意した見合いの席での事だった。 「きゃー! アニエス様が私に手を振ってくださったわ!」 「何言ってるのよ! 私によ!」 「決めたわ! 私、兵隊に志願する! アニエス様のお傍で働くの! ウチのボンクラだって務まるんですもの、きっと成れるわ!」 沿道の最前列でかしましい娘達がやんやと騒ぎ立てる、その後ろ。 そこには必死に背を伸ばして行列を見ようとする少年がいた。 父親の手伝いで城下町まで行商に来ていた彼は、 一生に一度あるかないかの大パレードを見ようと奮闘していた。 彼が住んでいるのは王都どころか碌に馬車も通らない田舎町。 この機会を逃せば次はないと確信していた。 しかし意気込んで沿道に乗り込んだものの人の波には逆らえなかった。 押され蹴飛ばされ何とか最前列近くまで来たがここが限界。 彼の眼に映るのは女性達の頭だけだ。 こんな事なら、なけなしの小遣いをはたいてでも、 テラスのある喫茶店に入れば良かったと後悔するも時既に遅し。 肉の壁に埋め尽くされて戻ろうにも戻れない。 最後の抵抗として、ぴょんぴょんとその場でジャンプを試みるが何も見えない。 その直後、着地しようとした彼の足が隣にいた男性の靴を踏みつけた。 あ、と思わず少年の口から声が漏れた。 見上げた視線の先には杖を差した屈強な青年の姿。 その袖から覗く白い包帯が戦争に参加していたことを雄弁に語る。 自分を見下ろす青年の眼に少年は完全に凍りついた。 パレードを見物する前に父親から受けた忠告を思い出す。 『戦争から帰ってきたばかりの兵隊は気が立っているから注意しろよ』 時にはそれで命を落とす事があるかもしれない、とまで脅かされていたのに。 周囲の熱気に当てられていた少年は今の今までそれを忘れていたのだ。 興奮が急速に醒めていき、彼は自分が置かれた状況を怖いぐらいに実感した。 自分に向けられる青年の腕に少年は耐え切れず目を瞑った。 ゆっくりと体が持ち上げられていく感覚。 ここから地面に叩きつけられるか、それとも殴られるのか。 いや、相手はメイジだからそんな程度で済まされるわけがない。 恐怖に耐えかねた少年が目蓋を開いた瞬間―――。 世界はそこに拓いていた。 花吹雪が舞い散る中、勇壮な衛士や騎士たちが列を成し悠然と行進する。 彼等を讃える凱歌が響き、割れんばかりの声援が大気を揺らす。 豪華な意匠をこらした馬車が聖獣ユニコーンに引かれていく。 その護衛には平民から騎士になったアニエスという凛々しい女性騎士。 少年は興奮を抑えきれず、思わず息を呑んだ。 絵本の中でさえ見た事がない、夢のような光景が広がっていた。 邪魔をする人の壁はなく、眼下に彼女らの頭が見えるだけ。 ふと隣に目を移せば、そこには先程の青年の姿。 自分が居たのは他ならぬ彼の肩の上だった。 慌てて降りようとした少年に彼は問いかける。 「ちゃんとその眼に焼き付けたか?」 彼の問いに頷きながらも少年は惜しむように行進を見やる。 その姿に青年は込み上げる笑みを堪えられなかった。 肩に担いだ少年は、かつての自分だった。 王都で見た英雄達の行進が今も目蓋に焼き付いている。 『烈風』と呼ばれた騎士の姿を目にし、その背を追おうと決めたあの日を。 「ねえ、僕も騎士に成れるのかな」 だから少年が言い出す言葉も分かっていた。 同じ事を言って叔父に笑い飛ばされた過去の記憶が過ぎる。 ましてやメイジでもない平民が騎士になるのは並大抵の苦労ではない。 アニエスとて内戦中のアルビオンに赴き、苛烈な戦場を乗り越えて掴んだものだ。 一時の憧れで辿り着けるような生易しい場所じゃない。 だから少年の体をポンと叩きながら答える。 「成れるかじゃない、成るんだろう?」 その答えに少年は満面の笑みを浮かべ大きく頷いた。 憧れを捨てずに歩き続ければ、いつかはその背中に追いつける。 ―――そうやって俺は此処まで来たのだから。 去っていく青年の背中を少年は見送った。 目に焼き付けたのはパレードではなく彼の背中。 傷を負いながらも戦い、誰からも讃えられずに去っていく。 その姿が誰よりも騎士らしく彼の目に映っていた。 戻る 目次 進む